ライトタッチで前後の安定性限界が拡大。転倒予防に寄与する可能性のある研究成果を発表(理学療法学科)
~健康な若年成人と高齢者の安定性限界についての新たな知見を発表~
転倒の予防には、立った状態でバランスを保つ力をよい状態に保つことが不可欠です。しかし、加齢や疾病によりバランスを保つ力は低下することが分かっています。そのため、バランスを保つ力を改善したり維持したりすることはリハビリテーションの重要な目的のひとつです。
立位での安定性限界(足を踏み出さずに体を傾けられる限界位置)は、バランスを保つ力を表す指標のひとつです。安定性限界が加齢に伴い狭くなることが今までの研究で分かっています。また筋力の改善などで安定性限界が拡大することも明らかになっています。しかし、安定性限界を拡大するためのバランストレーニングをどのように行うと有効かという点についてはほとんど分かっていませんでした。
バランストレーニングの際には、どうしてもバランスを崩すような刺激を加えなければなりません。しかし、転倒に対する恐怖心などの影響でうまくトレーニングを行えないこともあります。恐怖心を軽減しバランストレーニングを行う方法のひとつにライトタッチがあります。手の指先などで地面に固定された物に軽く触れることにより、立位の安定性が高まることが知られています。これはライトタッチ効果と呼ばれますが、手の接触に伴う力学的な支持ではなく、指先からの感覚情報がバランスに有効に作用するためと考えられています。しかし、ライトタッチが安定性限界を拡大するのかについては分かっていませんでした。
そこで健康な若年成人20名と高齢者15名を対象に、ライトタッチを行わない条件と行う条件(図の写真)で前後の安定性限界を測定しました。その結果、下の図に示すように、若年成人と高齢者のいずれにおいても、ライトタッチにより前後の安定性限界が拡大することが明らかになりました(「○や△」に比べて「●や▲」の方がより前後に移動できています)。この成果はGait & Postureという国際誌に掲載されました(Tomita H et al. Gait Posture 2024, 114, 28-34)。
この研究結果は、立位でバランスを保持できる範囲がライトタッチにより拡大することを示唆しています。バランスが低下している方での検討を今後行っていくことで、転倒予防のためのリハビリへの応用も期待されます。
【本件担当】
豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科 冨田 秀仁
電話: 0532-54-9585 メール:h_tomita@sozo.ac.jp
教員データブックURL
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【お問合せ】(報道に関すること)
豊橋創造大学・豊橋創造大学短期大学部 地域連携・広報センター
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